君ならばいくらでも

「ワガママ言ってもいい?」
珍しく、が言った。

「内容によるね」
「そうだよね」

「いいよって言って欲しかったなー」とが笑いながら話す。
の性格上、そんな無茶なことは言わないと分かっているし、そう言っても良かったかもしれない。
でも万が一、叶えられないものを言われる可能性もあったし。別に言い訳じゃないけど!

丁寧な前置きをするから何を言われるのかと少し身構えたが、やはりだった。

「ウイニングボールが欲しい」
開幕戦やホーム最終戦とか、特別な試合のものじゃなくていい。ただ、鳴が勝利投手になった時のウイニングボールが欲しい、とは言った。

正直、それはワガママの部類には入らないと思う。



のワガママを頼まれた数日後、それはあっさりと叶えられた。
ナイトゲームを終えて帰宅して、真っ先にウイニングボールを渡す。
はそれはそれは嬉しそうに、いつ買ったのか知らないけど手のひらサイズのバットを組み合わせて作られているボールスタンドを準備して、 スタンドにボールを置いた。と思ったらボールとサインペンを持って俺のところに戻ってきた。

「成宮選手、サインください! あ、日付もお願いします!」

家でまでファンサービスを求められるとは思わなかった。けど別にサインの一つくらい大したことではない。 からボールとペンを受け取って、サインと今日の日付を書いて渡した。 再びボールを受け取ったはご機嫌でボールを一通り眺めたあと、スタンドに置いた。
携帯を構えて写真を撮っている。こんなにウキウキしているのを見るのも久しぶりだなぁとぼんやりと思った。

「鳴、ありがとう! 実はずっと憧れてたんだよね!」

そういうのは、もっと早く言って欲しい。

Title : 確かに恋だった